DOS/Vの簡単な歴史
DOS/V(あるいは DOS/V マシン)と言う言葉は、最近は PC98 でも Mac でも無い海外の規格のパソコンと言う意味で使われるケースが増えています。
言葉は時と共に変化するので、まあそれはそれで良いでしょう。
DOS/Vの起源は、1990年当時(株)日本IBMが(以下IBM)それまでのパソコン事業での劣勢を挽回すべく発表した IBM DOS Ver. J4.0/V が元になっています。
この DOS には、それまでの日本製のパソコンの多くがハードウエアによる日本語表示機構を搭載していてそれを利用するのではなく、世界的に見ると最も台数の多かった IBM PC とその互換機を使ってソフトウエア的に日本語を表示する仕組みが組み込まれていました。
具体的には VGA(解像度640*480、色数16色)を利用してそこにビットマップフォントを表示し、プログラムAPIとして拡張された Video BIOS を使う様に定められていました。
そのため「VGA上で動く日本語DOS」と言う意味で略称としてDOS/Vと言う名称が使われるようになりました。
この DOS/V の面白かった所は、IBM が出しているにも関わらず、IBM 以外のハードウエアメーカの出している互換機上でも動いた事です。
Epson が PC98 の互換機を出した時に(もしかすると、これを知らない人がいるかも知れない!)、NEC が自社の DOS に対して行ったような姑息なプロテクトはありませんでした(尤もこういう対応をするのが普通だとは思いますが...)。
あまつさえ OADG (PC Open Architecture Developers' Group) なるグループを組織して、「皆さんこのDOSを使ってください」と言う戦略を取ったのです。
この様な戦略と Windows による GUI の台頭によって、それまで主流であった NEC PC98 シリーズのハードウエア的な優位性は無くなり、あっという間に DOS/V が動くプラットホームも(最初に書いた様な使われ方がされる程)、日本のメジャーの一つに成り上がりました。
最初は「VGA上で動く日本語DOS」だった DOS/V ですが、IBMはすぐに韓国語版、中国語版を同じ仕組みで発表しました(これらは基本的にフォントファイルが異なるだけです)。
また、US MS-DOS との違いはビットマップフォントを管理する $font.sys と、Video BIOS を拡張して画面に DBCS文字日本語を出す $disp.sys の二つで有ること、BIOS のAPIさえ同じなら VGA を使わずともアプリケーションが動く事に気が付いた人々は、DOS/Vを勝手に拡張しはじめました(私もその一人ですが)。
色々な試みが行われた後、最終的には1993年に IBM がDOS/V の拡張仕様「V-Text」としてこれらをまとめました。
これは、最初の DOS/V のAPI(つまりVideo BIOS API)に追加して、「フォントサイズ、画面サイズを BIOS から取得して、その値を使ってアプリケーションを動かしてください」と言う簡単な仕様です。
そしてこれがDOS/Vの最終的な形となり現在に至っています。
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Software
以下のプログラムは、私が作成したDOS/Vの勝手な拡張を行ったプログラム達です。
これらは、商用利用・個人利用を問わず全てフリーです。
また、SOFTBANK より出版されている
『DOS/Vスーパードライバーズ』
や
『DOS/Vスーパードライバーズ32』
の原形となったプログラムでもあります。
- FONTX
FONTXは、DOS/V標準の$font.sys(IBM DOS/V)、jfont.sys(MS DOS/V)の上位互換のDOS/V
フォントドライバです。さまざまなサイズのフォントを組み込めたり、同一サイズの複数フォントを組み込めたり、8086PCでも動作したり、全ての文字がユーザ定義可能だったり、Conventional memory, EMS, XMSのメモリをフォントバッファに持てたりと、標準ドライバに無い機能をたくさん持っていました。
IBMのフォントドライバは、IBM DOS/V Extension 2.0 や IBM DOS 7.0/Vからは、このフォントドライバと同様な機能を搭載してきましたが、それまでは拡張可能な唯一のフォントドライバでした。
このフォントドライバは、その機能を実現する為に独自のフォントファイルファイルフォーマットを使用していましたが、それにそったフォントや様々なツールが出ています。
最終バージョンは 2.04 です。
- DISPV
DISPVは、DOS/V標準の$disp.sys(IBM DOS/V)、jdisp.sys(MS DOS/V)の上位互換のDOS/Vディスプレイドライバです。
色々なサイズのフォントを使えたり、VESA SVGA 800*600 までの解像度をサポートしていたり、点滅カーソルが使えたり、8086PCでも動作したり、TSRとしても使えたりと、標準ドライバに無い機能をたくさん持っていました。
IBMのディスプレイドライバでは、IBM DOS/V Extention 1.0 や IBM DOS 6.0/V から同様な機能を搭載してきましたが、未だにこのドライバーにしか無い機能もあります。
最終バージョンは 1.60 です。
- DISPS3
DISPS3は、S3 86C928以前のS3社のビデオチップ上で動作するDOS/Vディスプレイドライバです。
DISPVと同様な機能を持ち、さらにアクセラレータを直接コントロールすることによって、より高解像度、より高速、より多様な画面が実現されていました。
『DOS/Vスーパードライバーズ』の基本モデルが、このドライバです。
残念な事に現在S3社のチップの主流から外れてしまっているので、このドライバが動く新しいビデオカードを購入するのは難しくなっています。
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